物忘れがひどい・すぐ忘れる
私たちは、見たり聞いたりしたことをすべて完璧に記憶できるわけではありません。人の名前をど忘れしてしまった、忘れ物をしてしまった、約束をすっぽかしてしまったなどの「物忘れ」は、年齢に関係なく誰もが経験するものです。そして一般に、物忘れは加齢によって、少しずつ多くなっていきます。
一方で、認知症の症状として物忘れが起こることがあります。認知症は、早期発見・早期治療によってその進行を遅らせることが可能です。
誰もが経験する加齢による物忘れと、認知症の症状として見られる物忘れには、いくつかの違いがありますので、このページで詳しくご紹介します。
ご自身で思い当たることがある場合、あるいは自覚はないけれどご家族から指摘されたという場合には、お早めにご相談ください。
物忘れのセルフチェック
心配のない物忘れ(加齢による物忘れ)
- 人の名前を思い出せないが、その人に関する情報(住む場所や家族構成など)は覚えている。
- 約束した日がいつであったか忘れてしまったが、その約束をしたことや内容は覚えている。
- 物をいれた場所を忘れてしまったが、いれたこと自体は覚えている。
- 昨日の夕食のメニューを忘れてしまったが、食べたことや誰と食べたかは覚えている。
- 今日の日付や曜日を咄嗟に正確に答えられないことがあるが、時間をかけて考えると分かる・おおよそは答えられる。
心配のない物忘れについては、「指摘されると思い出せる」「記憶のほんの一部が抜けている」という特徴があります。
認知症の発症が疑われる物忘れ
- 鍵、財布など、大切にすべきものをよくなくす。
- 水道の蛇口やガスの元栓の閉め忘れ、玄関の鍵のかけ忘れが増えた。
- 約束をしたことだけでなく、その内容も覚えていない。
- 日常的に通っていた道で迷うことがある。
- 怒りっぽくなるなどの、性格の変化が見られる。
- 今日の日付や曜日を答えられず、時間をかけても思い出せない・季節も分からない。
加齢による物忘れに加えて、認知症による物忘れが出始めている可能性があります。お早めにご相談ください。
認知症の進行が疑われる物忘れ
- ついさっきの出来事、話題を全然思い出せない。
- 何度も同じ話をする、同じ質問をする。
- 家族や親戚、親しい友人と他人を間違える。
- 以前は当たり前だった習慣的な作業(料理、洗濯、趣味など)ができなくなる。
認知症による物忘れが強く現れています。できるだけ早く、ご相談ください。
物忘れの原因と考えられる病気
アルツハイマーなどの疾患による物忘れ(根治が困難な認知症)
アルツハイマー型認知症
認知症全体の6~7割を占めるのが、アルツハイマー型認知症です。男性より女性によく見られる認知症です。
脳内でアミロイドβ、タウといったタンパク質がたまることで、脳の神経細胞が破壊され、脳が萎縮します。
記憶を司る海馬が障害されるため、最近あったことをすぐに忘れるなどの物忘れが生じます。進行すると、季節、日付、自分がいる場所、家族などが正しく認識できなくなります。
その他、攻撃的言動、徘徊、幻覚・妄想などを伴うこともあり、その場合は特にご家族の負担が大きくなります。
脳血管性認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多いのが、脳卒中を原因とする脳血管性認知症です。認知症全体の約20%を占めます。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中によって脳の一部が障害され、認知症を発症します。症状は、障害された部位によって異なります。
また、他の認知症と合併するケースも少なくありません。
レビー小体型認知症
認知症全体の約5%を占めます。発症率の男女比は2:1と、男性に目立ちます。
レビー小体という神経細胞にできる特殊なタンパク質が、大脳皮質や脳幹の神経細胞を破壊します。
初期症状として、「(いるはずのない)人が自宅にいる」といったような幻視が現れるケースが目立ちます。通常はその後、認知症特有の物忘れが始まります。
その他、手の震え、動作緩慢(のっそりと動く)、転倒の多発などの症状も見られます。
前頭側頭型認知症
四大認知症の中ではもっとも稀なのが、前頭葉と側頭葉が萎縮する前頭側頭型認知症です。
社会性が欠如する、言動の抑制が効かなくなる、自発的な言葉が出づらくなるといった、他の認知症とは傾向の異なる症状が見られます。通常、進行は緩やかですが、発症から6~8年で寝たきりになることが多くなります。
慢性硬膜下血腫などの脳疾患による物忘れ
慢性硬膜下血腫
比較的軽い外傷などによって、頭蓋骨の内側の膜(硬膜)と脳のあいだに出血が溜まっていく病気です。
また通常、外傷直後ではなく、3~4週間ほどしてから症状が現れることが多いため、ご本人が頭をぶつけたことを覚えていないことも少なくありません。その症状としては、物忘れなどの認知機能の低下、手足の麻痺、頭痛などが挙げられます。
脳腫瘍
良性・悪性のいずれの場合も、脳を圧迫することで物忘れなどの認知機能の低下が引き起こされます。頭痛、手足の麻痺、視力障害などの症状も見られますが、通常は緩やかに進行します。
ただし悪性の場合、短期間で腫瘍が増大することもあり、その場合は症状の進行も早くなります。
正常圧水頭症
脳のまわりや脳室を満たす髄液の吸収・産生のバランスが崩れ、髄液の量が過剰になる病気として、「水頭症」があります。画像検査では、脳室の拡大が認められます。
その中で、特に加齢を原因として高齢者に発症するのが、「正常圧水頭症」です。通常、先行して歩行障害が現れ、次に頻尿・失禁などの排尿障害が続きます。そして最後に、短期記憶喪失や関心の欠如、気分の変化といった認識機能障害が現れます。
40代や50代からでもなり得る若年性認知症
認知症は、必ずしも高齢者の病気というわけではありません。40代や50代でも発症することがあり、特に65歳未満で発症した認知症のことを「若年性認知症」と呼びます。
働き盛りに発症した場合には、仕事に支障が出て転職や退職を余儀なくされる、働くこと自体が難しくなり経済的に困窮するといったことで、ご家族により大きな負担がかかることがあります。
若年性認知症のリスクが高い人
若年性認知症を含めた認知症は、誰にでも起こり得る病気です。ただその中でも、以下に該当する場合には、脳への刺激が少なくなりがちで、そうでない人よりも発症リスクが高くなると言われています。
- 協調性に乏しい人
- 人との交流を避ける人、交流が少ない仕事をする人
- ネガティブな人
- ストレスを感じやすい人
- 怒りっぽくまわりの人から敬遠される人
脳ドックで物忘れの原因を早期発見しましょう
子どもや20代の若い人であっても、何かをつい忘れてしまうということはあります。そしてその後、老化として記憶力が低下すると、物忘れも少しずつ増えていきます。
しかし、約束の内容だけでなく約束したこと自体を忘れてしまう、朝食を食べたかどうかも分からないといったような物忘れについては、認知症が疑われます。認知症は、治療により進行を抑えることが可能であり、また治療開始が早期であるほど、治療の効果を得やすくなります。
前田脳神経外科クリニックでは、認知症、および脳卒中などの脳疾患の早期発見・早期治療を目指した脳ドックを行っております。最新鋭のMRI・CT検査、頸動脈エコーによる精密な検査を行っておりますので、安心してご相談ください。
検査結果は即時お伝えし、加えて必要な治療のご案内、予防のためのアドバイスをいたします。